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Artwork by affordance

K

Fujisawa
Area Management

Fujisawa Area Management is a local area management initiative that revitalizes the city through public space activation, community-driven events, and collaborations between citizens, businesses, and the municipality.

©Tomodachi ltd.

ふじさわエリマネの役割と
目指すビジョン

Eye’s from affordance

文:平野篤史
(アフォーダンス / 代表取締役)

©Kadowakamatsu Inc.

平野篤史
アートディレクター/グラフィックデザイナー/アーティスト/多摩美術大学准教授
1978年神奈川生まれ。‘03年多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒業。株式会社ドラフトを経て’16年、デザインスタジオAFFORDANCEを設立。主な仕事:ブランディング、CI、VI計画、サイン計画、プロダクトデザイン、パッケージデザイン、イラストレーションなど、グラフィックデザインを基軸に活動。主な受賞歴:TDC賞、JAGDA新人賞、経済産業大臣賞、SDA賞、CSデザイン賞など。アート制作活動。JAGDA会員、東京TDC会員。





藤沢をかき混ぜ、
リスタートさせる存在。

Re: Fujisawa
Re: Shonan

エリマネは、2028年に向けて「駅前を緑あふれる公園にする」「屋台村をつくろう」という二つのビジョンを掲げていて、そのために人とのつながりを広げたり、固定化しない・停滞しないことをしていく。成長、上り調子の時は良いけれど、下りの時だって、変化が必要。停滞はものが生まれない。それをかき混ぜていくような役割かな。

僕の意識でいうとエリマネとは、メインストリームとしての藤沢の意識とは、別のことをあえてやっていく場所であり、概念。藤沢って、すごく掘り下げていくと面白いものがたくさんあるけど、表面に見えているものは他の都市と変わらない。出会ってみないとわからない、様々な人がいる。それが表面化してくることが、面白いことなのだと思っています。我々はデザインを提供しているけど、今の藤沢の地続きにものとは違う藤沢の姿を作ることが目的です。

僕が担当したエリマネのコミュニケーションでは、藤沢という駅前のエリアを、周りの東海道線沿線のいわゆる、湘南エリアのイメージとはかけ離れた、もっと特質した存在になる様なデザインにしたいと思いました。

きっかけは、増田さん(角若松代表)から連絡をいただきました。その際に、増田さんが持っていた藤沢駅周辺に対する危機感がとても印象的でした。「このままだと子供達に対して、誇りが持てない街になってしまう」と。増田さんは「本当にそれで良いのか」を考える人。僕が思うエリマネは、まさにそれだと思う。本当にこれで良いのか、こうなったらどうなるの?こっちの場合は?こうなったらどう?と色々なプロセスを探っていく存在であるべき。

僕が担当したデザインのプロセスでは、まず藤沢の歴史を徹底的に調べました。そこから、海、山、川などを実際に取材して、図書館にある文献もリサーチしました。それらを通して分かったことは、この町が、元々が大庭の方まで海であり、江ノ島だけが海面から突起していたということ。そこから、大庭周辺に残る古代からの人の生活、出土した遺跡、江戸時代に多くの人が江ノ島に観光旅行に訪れていた事など、特徴を極限まで絞っていくと、昔も今も変わらずに存在したものが、江ノ島、海、山。藤沢は、その中で育ってきた街だということが分かりました。

なので、デザインでは、外角の形を僕らが新しく造形することはせず、藤沢の起源、地域から出土した遺跡の形をそのままトレースしています。遺跡という“歴史”に対して、山、海、町を表す、明快な青、緑、赤、黄色などを原色のまま使用しています。そこには「新しさ」が表現されていて、歴史と新しさが混じり合う事で生まれる未来の藤沢の象徴「ふ」という文字になります。加えてもう一つ、絵の具の飛び散った様に見えるようにもデザインしていて、そこには藤沢のリスタート――白い紙に市民の方々が思い思いのイメージをぶつけていく場所、というエリマネの姿が情景として表現されているんです。

©Kadowakamatsu Inc.

変わる藤沢、
変わらない藤沢

Fujisawa
Then and Future

コロナになるちょっと前に、独立して、三年目くらいですかね。家を辻堂に引っ越して―当時は代々木上原に事務所がありました―家に帰って来られない生活が続いていた。せっかく都内から引っ越したのに。。。そこで、思い切って、作業場を家の徒歩圏に借りたんです。その時に、増田さんから連絡をいただいたのですが、その時に、子供の頃に、地元の平塚から藤沢によく行っていたことを思い出しました。自分は田舎の中学に行っていたのだけど、当時の藤沢は、東急ハンズや当時流行のNBAグッズを取り扱っていた特殊なスポーツ用品店、自分の欲しい洋楽のCDを売っていたCDショップなど、独特なカオス感と文化的な側面がありました。

数十年東京に住み、こちらに戻って改めて藤沢をみた時に、東急ハンズがなくなっていたり、幼少期の思い出から変わっていた。その中で、名店ビルの看板は異質でした。その言葉を見た時に、衝撃的だった。何かに抗っている姿がそこにあった。自分にもその精神性と重なる部分があって、すごい、なんというか、抗うことが良いことだと思う節があって。子供の頃に見た藤沢の姿、そのままだった。

今は、AIで簡単に答えを求める時代。でも、そんなに簡単に答えは出ないです。だからこそ、抗って良いなと。エリマネは十分抗っている。僕は内部の立場で参加しているのではないから、見ていてとても大変だと思う部分もあります。でも、三年なのか、五年なのか、人が循環していく中には理解できないものがあった方が良いと思っていて、そういうものがエリマネで生まれると良いなと思います。人が流れていく中で、ものは変わっていく。実は、違和感のあるものに街が慣れていく方が、新陳代謝が起きる。「突拍子もないもの」があり続けるのだとすると、なぜそこに突拍子のないものがあるのか、というプロセスが大切。エリマネが、わかりやすくないものに対して、多少なりとも、「理解できないけど良いね」と言える存在になると、街が面白くなる。それが理想だと思います。時代は、それを求め始めている。変えたいと思う人たちが増えていくのは良いことだと思います。

©Kadowakamatsu Inc.

藤沢のコンセプトって、
インドかも

Fujisawa,
Something (might) happen.

藤沢って、表面的にはインドのようない街。人はいっぱいいて、それに対するカウンターとして、いち早く動く人たちが、増田さんを中心に集まっている。それはある明確なゴールに進んでいきつつ、たまにはそうではないものを受け入れて、新しい血を受け入れるための下準備をしている感じ。僕は、その土壌を作るためのお手伝いをしています。「マーケット251」のような場所が際たる例で、あの風景を見た時、マグマが地上に現れるような、爆発前夜のような地熱を感じたんです。

エリマネは、ビジョンとしては簡単にできないことを、大きく掲げてスタートを切りました。駅前に大きな自然空間を作ることすら、思い切らないとできない。それを実現することが一つの目的だけど、その大きなコンセプトを実現しようとするプロセスの中で、色々な戦いがあると思うんです。結果として、勝ち負けではなく、戦うことにこそ意味がある。そして、マーケットのように、三年が経ち、実績や答えが出てきたように思います。

About affordance

Okuda Bldg. 501 4-6 Kugenumahigashi, Fujisawa, Kanagawa 251-0026

affordance.tokyo

©Tomodachi ltd.

平野篤史とアフォーダンス

「ある時に平田晃久さんから連絡が来たんです。」

アフォーダンスの事業内容を語る平野が、最初に話したのは、自身がサインデザインの世界に関わるきっかけとなったプロジェクトについてだった。プロジェクトの詳細を伺いに行った際、建築家が持つ「情報量」に感銘を受けたことが、平野にとって新たな出会いとなった。それまで携わっていた広告の世界から、建築物の中で人を誘導し、場所を示すサイン計画のデザインへ。平野の好奇心とデザインへの探究は、ここから始まった。

公共プロジェクトでは、読みやすさとともに、あえて読みづらさも取り入れる。施設を利用する人たちに、見えるもの以外からも情報を与えるため、意図的に「隙間」をつくり、受け手の心に拠り所を生むことを目指した。表現手法やプロセスには多くの難所があり、理論や模型を用いながら試行錯誤を重ね、形にしていった。

現在、平野は、atelier occoというアート教室と共用するオフィスで活動している。そこでは、ネット上にはないリアルな世界――植物や地層といった自然物――をリソースとし、フィジカルな取組みを重視している。

「プロセスを大切にして、デザインとアートの境界をなくしていきたい。」

過程における可能性を探究しながら、いかに“範囲外”にあるものを見つけられるか。平野が描くアフォーダンスの将来像は、プロセスの検証と研究を重ね、一つのメディアに縛られない表現を社会に提示する組織としてのあり方を目指している。

Interviewed by Tomodachi ltd.