Menu

Artwork by affordance

K

Kadowaka
matsu
Building

Completed in December 2001, this nine-story mixed-use building stands at the north exit of Fujisawa Station, facing Sun Pearl Plaza. With floor plates of up to 600㎡, it accommodates offices and retail spaces in a prime urban location. Serving as both a gateway to the city and a platform for local culture, it hosts markets, events, and creative activities.

©Kadowakamatsu Inc.

人と文化を集める角若松ビル

Eye’s from a master of property management

文:植野正美

©Kadowakamatsu Inc.

植野正美
慶應義塾大学商学部を卒業後、ゼネコンのハザマ入社。(財)国際開発センターに出向し、マレーシア、ロサンゼルス、ホノルル、シアトル等の勤務を経て、1995年退社。シアトルでは、ハザマ所有の44階建てオフィス・商業ビルのアセットマネジメント・プロパティマネジメントに従事。1996年、米国ラサールパートナーズ社(現・米国ジョーンズ ラング ラサール)に入社。主に米国西海岸でプロパティマネジメント、インベストメントバンキング業務に従事し、ロサンゼルスでは、オフィスビル数棟の売却にも携わる。その後、U.A.P.M. Consulting, LLCを設立し、独立。シアトル在住。





外観が人を呼ぶ、
角若松ビル

Kadowakamatsu Building:
An Exterior That Attracts

角若松ビルは、まずいい場所にあると思います。そして、外観が良いんです。1階に証券会社さんの店舗があって、2階には良いクリニックさんが入っていらっしゃって、2階より上はオフィス。3階には藤沢駅の改札から繋がるプラットフォームがあり、アクセスの良さもあります。もちろんそれも良いことですが、やっぱり一番は、塔のように丸くなった敷地の角も含めたその外観です。これが、私が見た時の第一印象です。

つまらない外観のビルもあります。テナントに魅力ある不動産をつくらないとお客様は来てくれません。車にしてもそうですよね。デザインが良くて機能もあって。そういう素晴らしいものを皆求めています。プロパティマネジメントも同様です。その意味で、つまらないビルは、魅力のない車と同じで、最初に良いねと思っていただけないんです。

もう一つ大切なのは、誰に買ってもらうのかというターゲットの見極めです。角若松ビルで言えば、駅前で家賃を払って入ろうかなと思う人は誰かってことですね。立地、条件を冷静に判断する。角若松は都内の一等地にあるようなビルではないです。でも、お客さんを引きつける魅力があります。それには、ビルをテナントさんの事業に貢献できる場所にする必要があります。学習塾が入ってらっしゃいますが、経営者が「このビルで塾を開いたら生徒が集まる」と思ってもらうために、外見は大変大切です。そして場所も大切です。またセキュリティも大切です。不審者が入りやすい環境に学生を預けたい人はいないですから。入居するテナントさんとそのお客が何を求めているか掴むこと、角若松ビルはそれを持っていました。

©Kadowakamatsu Inc.

プロパティマネジメントの
真髄

True Art of
Property Management

不動産の専門家を仲介、こちらではブローカーって言いますけども、彼らがテナントさんを連れてきてくれます。つまりテナントさんは、その不動産屋さんに行って、「この辺にいいビルありませんか。」となるわけです。テナントさんの希望を受け付けるブローカー、不動産会社がいくつもありますよね。そのような会社に対して、どのように自分のビルを売り込むのかが非常に大切です。車に例えるなら、不動産会社はディーラーのようなものですね。さらにいうと、そこには売り込むのが下手なセールスマンと、上手いセールスマンの両方がいます。そこでさらに違いが出ます。下手なセールスマンしか知らないようなオーナーは、ダメなんです。良いディーラーの中でも、さらに腕利きのセールスマンと付き合うこと。そのような腕利きのブローカーに「角若松ビルは良いよ」と思ってもらうことがポイントになるのです。その点角若松は、その上手なブローカーが良いと思う状態—テナントも喜びそうとか、あるいは投資家を集めるような動きもできそうだ、と思ってもらえるビル—になっていると思います。

もう一つ、角若松ビルの1階、2階にクリニックが2件入ってて、それぞれに共用トイレがあります。そのトイレを家族用として、男女どちらもオムツ交換ができる綺麗なトイレにするプロジェクトがありました。その時、統計学を学ばれたオーナーが藤沢の駅の利用者数を出してきました。そこからさらに若い赤ちゃんを連れたお母さんの人数を絞り込み、最終的に100人という数字を出し、そのターゲットが使いたくなるトイレを作る。そうすると今度は入ってるテナントが気に入るんです。それがまた、価値につながっていきます。

©Kadowakamatsu Inc.

プロパティマネージャーの
視点

A Property Manager’s
Perspective

角若松ビルのプロパティマネジメントのお手伝いは大変楽しゅうございました。プロパティのプレステージが上がる活動、いわゆるイメージ戦略における活動も、マネジメントには重要な部分です。例えば、塾に通う学生が自習中にコーヒーをこぼしてしまったとして、そこにお掃除の方が来て「アンタ、何やっているの!」なんて言われたら、嫌でしょう。客商売としてわかっている掃除会社と、“ただ掃除すれば良い”と思っている掃除会社とでは大きな差が出ます。テナントさんのことを考えてみてください。「お掃除の人の感じが悪いから行きたくない」と学生から言われたら困るわけで。

メンテナンスや警備のスタッフとチームを組んで、イメージを作る。そうすると、皆の顔つきが変わります。ユーザーフレンドリー、いや、フレンドリー以上。通常はプロパティマネジメント会社が、メンテナンスや警備の会社を契約して雇うわけですけど、角若松さんご自身がそのプロパティマネジメントをやっておられた。オーナーがお掃除のおばさんと話してるわけです。オーナーがそのビルのターゲット、必要な価値をわかってやってますから、非常に面白いビルになるんです。

テナントが長期的に入居したくなるための取り組みも大切です。入居してもらった後に、どれだけ良い関係を作ることができるか。苦情が出ることも当然あります。それをどう捉えるか。豪介さんがおっしゃった言葉が非常に印象的ですけども「苦情をきちんと対応すれば、関係はもっと良くなるんです」と。不動産は賃貸借契約。いつでも退去されうる状況の中で、苦情をご馳走と捉えて対応しながら、テナントをファンにしていく。すると契約更新され、優良テナントの入居が続き、ビルの投資価値が高まります。

About Masami Ueno

©Kadowakamatsu Inc.

植野正美とプロパティマネジメント

「プロパティマネージャーは、オーナーよりもビルのことを考えている。」

植野は、ゼネコン時代、会社が所有するシアトルのプロパティが抱えた200億円という多額の負債を解消し、価値あるビルにするミッションを受け、渡米する。マネジメント会社を替え、US Bankの入居、シアトルに拠点のある国際企業の役員たちを招待するイベント開催など、ビルの価値を大きく高めることに成功。その一大プロジェクトで起用したアメリカのプロパティマネジメント会社の手腕に感銘を受け、抱えた負債を解消した後にそのマネジメント会社へ転職し、そのままシアトルに残った。茅ヶ崎出身の彼は、独立後もその会社との仕事を続け、日本に「プロパティマネジメント」の考え方を広げた第一人者として、今でも藤沢の発展を見守っている。

Interviewed by Tomodachi ltd.